時事記録 就職活動のために

11/30/2006

住基ネット:「プライバシー侵害」と離脱認める 大阪高裁

 住民基本台帳ネットワークシステム(住基ネット)はプライバシー権を侵害し憲法違反だとして、大阪府内5市の住民計16人が各市に1人5万円の慰謝料などを求めた訴訟の控訴審判決が30日、大阪高裁であった。竹中省吾裁判長は「住基ネット制度には個人情報保護対策の点で無視できない欠陥があり、拒否する人への運用はプライバシー権を著しく侵害する」と違憲判断を示し、守口、吹田、箕面の3市に原告住民4人の住民票コードを削除するよう命じた。住基ネットを巡り、個人の離脱を認めた司法判断は2例目。高裁判決では初めてで、制度全体の見直しを国などに迫るものとなった。慰謝料請求については、1審・大阪地裁判決を支持、原告全員の控訴を棄却した。

 大阪府内の8市の住民56人が02年11月、慰謝料請求訴訟を起こしたが、大阪地裁はすべて棄却。3市と豊中、八尾両市の計16人が控訴し、うち4人が控訴審で新たに住民票コードの削除を求めていた。

 竹中裁判長は氏名などの本人確認情報や住民票コードについて「取り扱いによっては、個人の期待に反して私生活上の自由を脅かす危険を生じることがあり、プライバシー情報として自己情報コントロール権の対象となる」と判断した。

 住基ネットの制度に関しては、(1)自治体が独自に他の機関に情報提供することができ、本人がその目的を知ることが困難(2)第三者の利用や行政機関の目的外利用を禁じる制度的担保が十分ではない(3)少数の行政機関が個別に保有する個人情報の範囲が広がり、情報が結合・集積されて利用される可能性がある??などと問題点を指摘した。

 その上で「行政機関で集積された情報が(住民票コードを使って)データマッチングや名寄せされ、住民の多くのプライバシー情報が本人の予期しない時に、予期しない範囲で行政機関に保有され、利用される具体的な危険がある」と判断。そして「同意しない原告に対する住基ネットの運用はプライバシー権を著しく侵害し、憲法13条に違反する」と結論付けた。

 原告側によると、住基ネットを巡る訴訟は、国などを相手取って全国の地高裁で係争中。金沢地裁が昨年5月、住民票コードを含む本人確認情報の削除を命じる判決を出し、その控訴審判決が12月11日、名古屋高裁金沢支部で言い渡される。