時事記録 就職活動のために

11/17/2006

GDP速報 成長持続の決め手は賃上げ

 景気を見る時、過度の悲観も楽観も禁物である。データを客観的に読み判断を下すことが何より重要だ。それにより適切な政策も可能になる。この論理にしたがえば、今年7?9月期の国内総生産(GDP)速報からは、いま、日本経済で最も注目しなければならないのは個人消費であることが読み取れる。

 実質で前期比0・5%、年率換算で2%の成長はほぼ日本の実力である。名目成長率も前期比0・5%、年率1・9%と足元ではデフレも解消しつつあるように見える。この期の成長を引っ張ったのが輸出であることも数字からわかる。形の上では外需依存の成長ということである。

 ただ、内需全般が弱かったわけではない。企業の設備投資は依然高水準であり、住宅投資もプラスだ。内需の中で不振なのは公共投資と個人消費である。公共投資は予算改革の趣旨からも引き続き減少が続くのはやむを得ない。

 それに対して、GDPの約6割を占める個人消費の落ち込みがこの期にとどまらなければ景気押し下げ要因になる。企業設備投資にも影を落とすことになる。

 完全失業率が低下し、正規雇用も増加の兆しを見せている。しかし、定期給与は横ばい状態のままというように、所得環境は厳しい。それが消費者の財布のひもを固くしている。企業部門は大手を中心に引き続き業績好調である。

 マクロ的な安定成長実現のためには、企業はボーナスのみならず、定期給与の引き上げなどを行うべきである。これまで、大企業はリストラの過程で労働分配率を引き下げ、業績回復を図ったのだ。先々を見据えた安定成長に寄与することは企業のためでもある。

 今回の景気拡大は11月で58カ月に達し、いざなぎ景気を超えるが、景気動向指数や機械受注、鉱工業生産などの経済指標には先行きに対する不透明感が表れている。循環論的には04年半ばから05年初めまでのように、景気が踊り場的局面を経過し、再び拡大に転ずるのが最も望ましい。その決め手は家計が動き出すことであるのだ。

 また、日本経済の体質改善は確実に進んでいる。消費者物価指数の基準改定で経済全体の物価変動率であるGDPデフレーターは従来より拡大したものの、国内需要デフレーターに限れば、プラスになっている。銀行貸し出しも増加基調が続いている。企業の売上高経常利益率も最高水準にある。これに加えて、家計部門が強固になれば成長の土台は固まる。

 安倍晋三首相は成長重視の政策を展開しようとしている。経済活性化で成長率を引き上げようというのだ。中長期的には研究開発促進による技術革新が決め手ということになる。この方向は正しい。

 一方で、短期的には、金融政策に期待している。日本銀行に現状の超低金利を維持させるというのだが、これは間違いだ。短期の誘導金利は金融政策が働きうる水準まで徐々に引き上げるのが筋だ。異常事態を長引かせることはやってはならない。