時事記録 就職活動のために

10/28/2006

英国 イスラム女性ベール着用問題、波紋なお続く

ストロー前英外相が火をつけたイスラム女性のベール着用問題をめぐり、英イスラム団体の指導者らがこのほど「政治問題化させる論議を避けよ」との共同声明を発表、着用是非論争がイスラム社会への偏見助長につながることに警戒を示した。オープンな議論か、それとも社会の「傷口」拡大を避けるべきか。異文化・異宗教に寛容な英国社会だが、ベール問題の波紋はなお続いている。

 イスラム女性が両目以外の全身を覆うベールを着用することを、ストロー前外相が今月初め寄稿で「対話の障害になる」と問題視。ブレア英首相も17日の会見でベールが「分断のしるし」だと語り、英国はどんな困難な問題でも「立ち向かって論議する」ことが必要だと同調。

 今月中旬には、ベールを着用したまま語学の授業をして停職となった女性補助教員による処分撤回訴訟の判決が英中部であった。宗教差別ではないとして訴えは退けられたが、女性は「(ベール姿の)イスラム女性はエイリアンではない」と法廷闘争を続ける意向を表明。ブレア政権の閣僚が訴訟の取り下げを暗に求め、ベール論争は過熱した。

 英国イスラム評議会やイスラム人権委員会など主要団体トップや英国各地のイマム(イスラム伝道師)ら27人は、25日公表した共同声明で「今日はベール、明日はあごヒゲ、次はスカーフとなりかねない」と警戒を示す一方で、ベールの着用の是非は「イスラムの学問的論議にゆだねよ」と強調した。

 英国のイスラム女性80万人中、両目以外を覆うベールを着用する人は5%未満とされる。公立学校でのイスラム女子生徒のスカーフ着用が禁止されているフランスなどとは違い、英国にはイスラム女性の宗教服を禁じる全国ルールはない。

 イスラム団体は、ベール問題がイスラム過激主義者や反イスラムの保守派に利用されることを懸念しており、それが論議沈静化を促す声明につながったとみられる。

 英人種平等委員会のフィリップ委員長は、ベール論争が過熱すれば「暴動の引き金になりかねない」と警告。保守党のキャメロン党首も「政治家がわれもわれもと論争に群がるのは危険だ」と語る。今は「自由な議論」より「社会の安定」を重視する空気が強い英国だが、多文化主義を掲げてきた労働党の投じたベール問題の一石は、英国社会の変化の兆しとみることもできる。